この子は、わが家に来てくれた最初のうさちゃんです。
享年1歳6カ月。
私が未熟だったばっかりに、飼い主として何もしてあげられないまま、あっという間に、お月様へ旅立たせてしまいました。
この子に対しては、本当に後悔しかありません。
今なら、もっと、いろんなことをしてあげられるかもしれないのに、この子はもう戻ってはきません。
この子は、不正咬合の末、うっ滞を起こし、2度も、動物病院で全身麻酔をして、歯を切ってもらいました。
そして、2度目の全身麻酔の翌朝、パタンと音を立てて倒れ、それっきりでした。
すぐに動物病院に電話をかけました。
いったい何がよくなかったのか・・。
そこで、病院の看護師さんから告げられた言葉がこれでした。
「それは、その子の、持って生まれた運命です」
え・・・・・?
もっと、医学的な根拠が聞けるかと思ったのに、「運命」って・・・?
電話を持ったまま、立ち尽くすしかありません。
でも、今の私なら思います。
「本当に運命だったかもしれない」
ここでは、怖くて悲しい、うさぎの不正咬合について、記載したいと思います。
不正咬合とは
うさぎの歯は一生伸び続けます。
それを、食物繊維の多く含まれた牧草や、硬い木をかじったりして、上下互いの歯を上手に摩擦し、歯が伸びすぎることがないように、適度な長さに調整しています。
ところが、その調整がうまくできなくなると、歯が伸びすぎてしまい、上下の歯で上手に食べ物をすりつぶすことができなくなってしまいます。
うさぎが食べ物をすりつぶす動作が少なくなると、伸びすぎた歯がとがって、口の中を傷つけてしまい、ご飯を食べる=口の中が痛い ということになってしまいます。
こうなってしまうと、口の中に痛みを伴う牧草は、めっきり食べなくなり、比較的、口の中が痛くない柔らかい餌ばかりを欲しがってしまいます。
そして、柔らかい餌ばかりを食べて、食べ物をすりつぶす動作がさらに減ってしまうと、さらに歯が伸びてしまい、さらに口の中が痛くなるという悪循環に陥ってしまいます。
そうなってしまうと、ご飯も食べられなくなり、内臓系の病気も併発してしまいます。
伸び続けた歯は、顎に突き刺さったり、目や鼻の下から突き出してしまうこともあるそうです。
不正咬合の原因
不正咬合の原因としては、後天的な原因によるものと、先天的な異常によるものの2種類があります。
後天的な原因によるもの
硬い牧草や木をかじって、上下互いの歯を摩擦し、歯が伸びすぎることを防いで生きていくうさたちなのですが、うさぎが喜ぶ姿を見たくて、柔らかい餌ばかりをあげていたりすると、歯が摩擦されず、うまく歯を削れなくなってしまうんですね。
うさちゃんが喜んでくれるから、ついついあげたくなっちゃうのよね~
柔らかいラビットフードやおやつのクッキー、中には、うさぎが喜ぶからと、食パンをあたえてしまう人も・・・。
ラビットフードや食パンを食べても、食べるのは少しだけで、あとは普通に牧草を食べてくれればそれでいいのですが、おいしいものをあたえすぎてしまうと、やがて、牧草には目もくれず、柔らかい食事しか食べなくなってしまうこともあります。
こうして、食べ物をすりつぶすことが少なくなり、歯が伸びてしまうわけです。
また、ケージをかじったりしても、歯のかみ合わせが悪くなり、不正咬合となることがあるようです。
後天的な原因については、飼い主さんとうさちゃんの頑張り次第で、予防できそうですね。
先天的な異常によるもの
さきほど記載したように、うさぎは、上下互いの歯を摩擦し、歯が伸びすぎることを防いで生きていく動物です。
しかし、生まれつき歯並びが悪い子は、上下の歯をうまく摩擦することができません。
人間ならば、多少歯並びが悪くても、実生活にさほど大きな影響はありませんが、うさたちは、「歯並びが悪い」というだけで、致命傷となってしまうのです。
上下の歯をうまく摩擦できなければ、当然、歯は伸びてしまい、口の中を傷つけ、不正咬合の負のスパイラルにはまってしまうのです。
生まれつき歯並びが悪いかどうかがわかるには、生後数カ月~1年以上かかることもあります。子うさぎで飼ったときにはわからなかったけれど、しばらく一緒に暮らしていたら症状が出てきた、というのが一般的です。
この、先天的な異常については、飼い主さんやうさちゃんの努力で、どうにかなるものではありません。
不正咬合の治療法
不正咬合になってしまった歯は、動物病院で切断してもらうしかありません。
この、歯の切断自体は、そんなに害になるものではありません。
問題は、歯を切断するために、全身麻酔をしますが、この全身麻酔が、うさちゃんの寿命を大きく縮めます。
しかし、歯を切断しなければ、もっとうさちゃんの寿命を縮めてしまうため、飼い主さんは全身麻酔という悲しい選択を迫られることになってしまうのです。
しかも、動物病院で切断した歯は、また伸び続けるため、一度、不正咬合になった子は、一定期間が空いたのち、再び不正咬合になり、その都度、全身麻酔をかけることになってしまうのです。
飼い主としてできること
不正咬合を発症した原因が、後天的なものである場合はともかく、先天的な異常であったとき、飼い主さんの中には、「歯並びのいい子なら、こんなことをしなくても済んだのに」と、思われるかもしれません。
そんな時は、ぜひ、考え方を改めていただければと思います。
そう、飼い主さんの元にやってきてくれた、目の前にいる歯並びの悪いうさちゃんとは、一緒に過ごせる時間が、そう長くはない、ということです。
その子がお月様に旅立ってからでは、どんなに後悔しても、その子は戻っては来てくれません。
「歯並びのいい子だったら・・・」なんて、考えている余裕があるならば、今、目の前にいる子と過ごす残された時間が、より楽しいものとなるように、考えていただければと思います。
死が近づくにつれて
残酷な話ですが、うさちゃんの死が近づけば近づくほど、受け入れてくれる動物病院は減ります。
これは、高齢うさぎの介護でも、同じです。
うさぎを飼っていて、一番、孤独でつらいのが、この時期かもしれません。
世間からポツンと取り残されたような、そんな気持ちになってしまいます。
でも、もしかしたら、楽しそうに見える目の前の学生さんたちにも、愛犬を失った経験があるかもしれません。
何気ない買い物帰りの主婦の方も、もしかしたら、親御さんの介護で悩んでおられるかもしれません。
飼い主さんもうさちゃんも、決して悪くないので、責めないでほしいです。
そして、私自身にも、このブログを読んでくださる全ての飼い主さんにも、お伝えしたいことがあります。
世界中、全ての動物病院が、あなたのうさちゃんの受け入れを拒否したとしても、あなただけは、最期まで、あなたのうさちゃんの味方でいてあげてください。
いかがでしたか?
今回は、暗くて悲しいお話になりましたが、目の前のうさちゃんがずっと一緒にいてくれることに、日々感謝しながら、楽しく過ごせたらいいですね。
文中の街の雑踏の画像は、t_watanabeによるPixabayからの画像です。